勇者の肉塊はつまるところ『薬液漬けの肉』である。
そもそも昔から肉はエネルギー源として非常に優秀だったものの、その保存の難しさが常に課題であった。
干し肉や、凍結させる、またはすぐに食べきってしまうなど、昔の人は創意工夫を得て肉をとにかく食べていたのだ。
現代では言えば、ベーコンやハムはまさにこの肉の原型である。昔は香辛料等で殺菌させ、乾いた肉を更に日持ちさせていた。
しかし、この肉はそのカテゴリとは違い
「薬液漬けの肉」である。
実は過去を見ても液体漬け、またはそういった水気のあるものに漬け込んだ肉は少ない。
これらが特に人気があったのは日本含め中国などのアジア圏であり、水が豊富であり、また香辛料も特有のものが多い場所で使われていた。
また、水漬けの関係上、どうしても熱帯的な場所では水自体が腐ってしまうので、ある程度冬の乾いた空気が必要だったのである。
例えば日本では「蓼(日本特有の香辛料、辛く酸っぱい味)の味噌漬」や「梅肉の味噌漬」「柚子味噌漬」が有名だろうか?
これらを贅沢に頂く時は、みかんの葉や、朴葉といった香りを持つ大きな葉に包み、一緒に焦がすように蒸し焼きにする。
これらは生肉に味噌をつけて分解させ、腐らせることを前提で作った肉である。
当然、生食は難しく、加熱を前提で作られており、勇者の肉塊とは似て非なるものと言っていいだろう。
では、似たようなものはあるのだろうか。
それは中国やモンゴルで食べられていた。
「腊肉(ラーロウ)」であろう。
これは八角や山椒、唐辛子や干した薬草等の多くの香辛料と、塩を大量に入れた特性の醤油のつけ汁に肉を4-5日、長いものは数週間も漬け込む。
これらを最終的には天日干しをして食べるが、長い冬を経て数週間、または数ヶ月単位で着けたものはそのまま着けたものを食べることができる。
これがほぼ、現在ある勇者の肉塊のそれに近い。
味としては、非常にしょっぱい角煮に近い、だが食感は完全にビーフジャーキーのそれであり。「瑞々しいビーフジャーキーの角煮」と言ったところ。
ちなみに、干し肉は調理を前提で作られており、蒸せばふんわりと、肉まんの柔らかな触り心地のような味の濃い美味しい肉が生まれる。
また、最近は生ハムのようなほぼ生肉で食べれる腊肉も生まれている。
これは角煮の生ハムと言った具合で、ねっとりと少し硬い肉をそのままかぶりついて食べれるだろう。
おそらく制作ツールで作る場合は漬け込む際の時間がほぼ無いため、後者のような状態、もしくは焼いて直ぐに着けたものを食べるのかもしれない。
何にせよ、肉は美味いのだ。